Episode12 「自分が失敗すると 人に迷惑をかけることを理解する」 

2012年4月28日

国立病院機構財務部は、営繕職と事務職の混成部隊でした。

職種が違うと交流が乏しいという厚生労働省の仕事文化のままに、財務部も営繕職と事務職の関係は希薄でした。前回の営繕職との「切磋琢磨」のやりとりの際も、事務職は「大変そうだな」と、横目で見ていた程度と思いますが、私の次の仕事は、この営繕職と事務職を「運命共同体」にして、それぞれの仕事に緊張感と一体感を持たせることでした。

着目したのは、営繕職が担う建設工事の進捗と事務職が担う建設資金の調達の関係です。具体的に言えば、「工事が遅れると、予定通りを想定して調達した資金が遊び無駄に利息を払う必要がでる。」 逆に、「資金調達が遅れると、本部資金を一時的に活用するので本部の利息収入が減る。」という関係です。
口で言ってわかるようなら、国直営時代から効率的にやっていたはずですので、これを意識する環境づくりに意を払いました。
 

まず、工事の進捗について、全案件(100件以上)の状況を一覧表で作成させて、月1回の部内会議で報告・議論するところからです。私が、遅れている案件について、その原因・理由を、内部事情・病院事情等にわけて聞き出し、「内部事情による遅れは許さない」という意志を全員に見せ続けました。
次に、その工事進捗と並行して、本部資金の運用を始めることとし、資金繰りの状況=本部資金の変動+運用の状況をグラフで部内会議に報告させるようにしました。その上で、同じく全員の前で、「将来の資金需要等の見込みができていない。甘い。」などの指摘を、事務職に対して繰り返し、資金繰りに関する全員の意識を高めていきました。言うだけでなく、会議後には、銀行からの出向者の知恵も借り、担当者たちと、「これはどうする。」「あれはこうするか。」などと意見交換をしながら改善していったことは当然です。

 

だんだん慣れてきたと感じると、資金調達等に失敗した担当者には、そのミスで利息をいくら損したのかを、会議中に担当者に計算させて報告させました。いつも概ね数十万でしたが、この損害をどうするのかと質問し、「君が払うのか?」と聞くようにもなりました。これだけ聞くと、「パワーハラスメント」に見えますが、実際には、数十万という金額規模が、担当者にとっては現実的な数字であったこともあり、次回には、この分を取り返すべく努力する姿が見え、会議で「今回は失敗なしです」と嬉しそうに報告する姿=成長の姿も見ることができるようになりました。

これらを経て、営繕職と事務職が、ほっておいても会議資料を作る段階から相互に情報交換を始めるようになりました。私という「鬼(写真は昔勤務した大津市の伝統工芸 大津絵から)」を共通の敵として、「生存本能」に目覚めた彼ら同士が協調し協力し始めたということです。思惑通りに「運命共同体」になったのです。これには、以前は机の配置が職種別だったものを、無理やり、営繕職と事務職が向かい合わせに座るように環境を変えたことや、しかりつける時も意識的に営繕職と事務職をセットで呼んでいたことも、彼らが日々の話をするようになった要因と思っています。

 

部下同士が運命共同体と感じるようになる(仲良しクラブではダメですが)と、チーム全体として面白い仕事ができるものです。

それに向けて、どう仕掛けるかは、人それぞれでしょうが。