Episode10 「組織を知る 上司を知る 現場を知る」 

2012年4月8日

今回からは、財務部長就任から、順次、書き進めます。

国立病院機構財務部長となったのは、小泉総理の郵政解散後の平成17年8月末です。内心ではお役所での最後の仕事として、心血を注いだ障害者自立支援法案が廃案となり、燃え尽きた感が強く、即退職希望でしたが、清水さん(現国立病院機構副理事長)から、「国立病院機構でやってみないか。凍結した設備投資を動かして欲しい。」とのミッションンを託されて、異動したものです。

最初は、国立病院機構の初年度の経営結果も悪くはなく、一方、障害保健福祉部での激務もあり、その疲れをとる意味もあって、数カ月は様子見かと思っていたのですが・・・
 

週1回開催の役員会に出席しその会議の内容に「?」と首をかしげ、日々の本部職員の端々に感じる純公務員としての発言に「??」と首をひねり、本部でお会いする院長の皆さんの発言が昔ながらの「陳情」と何ら変わらないことに「???」と考え込んだものです。

私自身は、国立病院組織(旧国立病院部を含め)は初めての経験でしたので、楽しみにしていたのですが、当初の正直な感想は、「役所と何も変わらないじゃないか?」でした。清水さんからのミッションを実現するには、「相当、乱暴なことをしないといけないな」と感じ、「組織」を知ることに、最初の半年、時間をかけました。

 

まずは、私の判断・行動に対して許可する立場にある役員を知ることでした。役員の方の特徴・判断基準・仕事のこだわり・自信のあるところ・弱いところなどの理解からです。お役所仕事であれば、全ての案件に部長が役員に説明する必要はないのですが、あえて半年は、自ら、ほぼ1対1で話をするようにしました。相手のことを良く知るためです。これは、自分で説明する以上、仕事を自分なりに、よく勉強し理解するという意味もあります。部長ともなれば、1人で説明に行って「わからない」では、済まないからです。
お陰で、矢崎理事長(3月一杯で退任されました。お世話になり、ありがとうございました。)をはじめとする役員の方と、結構、本音のやり取りをすることができ、この間で相互の信頼関係ができたように思っています。

この時の蓄積が、その後の、相当、乱暴に見える私の仕事ぶりを、役員の皆さんに、心配しながらも、黙って見ていてもらえた要因なのでしょう。
 

これと並行して、極力、現場の病院を見るようにしました。最初は、財務部長着任後、1か月程度で、単身、北海道の5病院を見に行きました。各病院の経営層の考え方、やる気、組織統率力などを確認に行ったのです。概況説明で何を言うか、見学で最初に何を見せるか、経営層と現場職員の関係はどうかを通じてです。この北海道では、院長との会話をきっかけに、道北病院(現旭川医療センター)の病棟建替(写真)の検討が始まりました。

その後も、時間もなかったので、1日で4病院に行くこともよくありました。院長会議などで、厳しく質問する院長の病院には、積極的に行き、時間があれば、夜食事をしながら本音で話したりしました。「うるさ方」と言われる人が、本当のところ、何を考えているかを知るためです。もちろん、私の考えを試す場でもありました。さすがに1日の日程を終えるとフラフラでしたが、それでも得るものは大きかったと思います。
これらを通じて、最初に感じた「役所と同じ」は、さらに強い確信となる一方で、「うるさ方」の院長との話の中で、国立病院組織を動かすヒントを積み重ねることもできました。
これらが、私に託されたミッションに着手する第一歩となりました。