2012年3月28日
新設された「破たん処理スキーム」の基準に一次的に適合する病院は、廃止した病院のほかに1病院ありました。岩手県に所在する花巻病院(写真)です。
花巻病院は、平成5年に統合した病院であり、統合の際の過大投資等に起因して、国立病院機構発足時で、既に5億を超える債務超過の水準でした。平成17年の医療観察法入院病棟の開設後も、他の病棟の患者数と職員数のミスマッチで、毎年、20億程度の医業収益で2億を超える赤字を出していました。
吉田企画経営部長(当時)から呼ばれて、この説明を受け、「二つ廃止するのは大変だよね」と念を押されたところで、廃止病院は企画経営部で処理するので、花巻病院は財務部で「何とかしろ」という意味と理解し、「何とかします」と引き受けました。
個人的にも、厚労省障害保健福祉部時代に、医療観察法の入院病棟の整備の件で、私自身が説明者として、地元市議会や地元自治会で説明会を開催した因縁のある病院でしたので、何とかしたいと、まず、考えたのは院長がどんな人かということです。
請われて肥前精神医療センターから花巻病院の院長に就任したのですが、たまに本部でお会いすると、「もう辞めたい。病院に金もなく何もできない。」と公言され、面白い人だなという印象でした。
個人的には、やる気がないのではなく、やりたいのだけれどクリアすべき条件が厳しすぎると言っているのではないかと判断し、建設投資の実施(急性期病棟の新設・重症心身障碍病棟の改修等)を条件に、不採算病棟を一気に閉鎖し、過剰なスタッフを削減することで採算をとるという案で、院長他の了解を得られないかを考え始めました。
これまでの建設投資の案件では、改善のプランを内々作成し可能性を検証していましたが、実際には、病院には見せていませんでした。やってもらえると思われるのが嫌だったからです。しかし、今回は、事の経過と残されている時間から、財務部で作成したものを病院に提示し、病院として「乗るか乗らないか」を選択してもらうつもりでした。
しかし、実際に検証してみると、厳しく見ると、どうしても黒字には持っていけないので、事務部長を事務長にする(人件費を抑える)などの、これまで使ったことのない一段と厳しい手法を用いなければなりませんでした。
厳しい交渉になるなと想像しながら、現地に中嶋整備課長(当時)と北海道東北ブロックの担当者と冬の花巻を訪問しました(個人的には地元説明会以来で感慨深かったですが)。
「もう辞めたい」との、いつもの院長の挨拶から始まりましたが、早速に、「この病院は、破たん処理の検討対象となっています。しかし、本日、提示するプランを実施していただけるのであれば、新規の建設投資も検討します。院長、これならやる気が出ませんかね?」と、内容を順次説明しました。
事務部長からは、「ぜひ、やりたい」との回答があり、院長からも、「国は医療費を削減しろと言ったり、病院経営を良くしろと言ったり難しいことを言うね。」といつもと違う反応があり、私から「病院の経営効率が上がれば、地域の医療費は結果的に安くなるのです。」と答えて、花巻病院の再生プランが動き出しました。
あれから4年、平成20年度で概ね収支均衡し、平成22年度では黒字が1億を超えました。
院長も今月一杯で引退とのことです。吉住院長、ご苦労様でした。