2012年3月8日
再生プランの展開として、前回の本部・ブロックでのトライアルと並行して進めていたのは、「生産性の指標」づくりです。
これは、財務部長の1年目に、あまりに本部職員の病院を見る目が、赤字か黒字かという結果しか見ておらず、表面的な結果の奥にある、隠れた「要因」を職員が考えるように促すために、財務部固有の資料として整えた「投資格付」というものが原型でした。
これには、赤字黒字・資産状況等の指標もあるのですが、一方では、病棟での余剰人員の存在や、医師1人当たり・専門職1人当たりの医療サービス実施数(写真)、材料費の高さなどを指標化しました。後者の指標は、通常であれば、これら数値の悪いものをマイナスとするところを、財務部では、あえてプラスの評価としました。
そこに資金が「寝ている」=それを「起こせば」使える資金となるという発想です。財務部は、単なる「融資部門」ではなく、経営が苦しくても病院の将来のために建設投資をせざるを得ないのですから、病院に「寝ている」「落ちている」資金を見つけることが必要です。見つけられれば、それを病院に伝えて、病院の行動を見守り・促すことができます。ただ資金計画の数字を「作る」だけでは、良い結果は生まれません。数多くの国立病院機構内での建設投資も、こうした手法を応用して実現したものです。
こうした「ものの見方」を一般化し、全病院の生産性の指標を、一覧性を確保して機構内全体に公表しました。経営数値が良いと思っていた病院が、実は、特定の分野では効率性が著しく低かったことがわかったり、長らく経営数値が悪いとされた病院が、簡単に改善できそうなことがわかったりと、結構、その前後で皆さんの見方が変わったと思います。新たな気づきがあったということです。特に、本部・ブロックは、これを武器に、病院に強く言えるようになったようです。これは、比較軸ができたということでしょう。
この指標を使って、自分の病院の課題に気づいた病院は、再生プランを作る前に、自ら改善に取り組み、平成19年度中に目標達成した病院も複数出ました。新たな視点・知識が功を奏したと言えます。
(今でも、同じような指標を本部は持っているようですが、未だに同じことを繰り返しているのは心配なところです。次の新たな視点・知識が必要な段階のはずです。)
これに加え、再生プランの推進のため、各ブロックに顧問を置くことにし、国立病院機構内の他病院の院長・副院長に依頼をしました。事務方だけでは言いにくい場合でも、医師の言葉で伝えると効果があると考えたからです。一方では、これら顧問になった人は、他の病院を見ることで、自らの病院の課題等にも気づくのではないかという期待や、将来の経営者としての勉強の機会として欲しいとの意味もありました。
全てがうまくいった訳ではありませんが、何人かの顧問の方は、当初の期待以上に活躍していただき、事務方の気づかない病院の抱える問題を「あぶり出し」ていただけました。
一方、私の「いたずら心」ですが、業績の悪い病院は本部管理とし、そのうち特に悪いものは役員担当としました。いずれ書くと思いますが、2病院の統合問題で、国直営時代そのままの「陳情斡旋」をされる理事の方がおり、その方に、しっかりと経営責任をとっていただくためでした。
これらの事前準備の直接的な効果かどうかはわかりませんが、平成22年度決算では、交付金なしでも黒字の水準を達成しました。これには私も驚きました。