Episode6 「再生すべきは 関わる側の意識と力量」 

2012年2月28日

平成19年の夏、退職が先送りになり、残り半年をどう過ごすかと考えていたときに、月例役員会(外部役員等も参加する月1回のもの)において、2人の監事の方から、「全体として経営改善は進んでいるが、一方では、短期借入金(内部)が累増する病院が増えている。」「病院の個別の事情に応じた、リバイバルプランが必要な段階では。」といった指摘を受けました。
吉田企画経営部長(当時)と話をして、従来の損益重視の経営改善から、資金繰り重視の経営改善に移行しようということになり、長期資金の管理を担当していた財務部で病院のランキングを作り、改善目標を作ることに着手しました。端的に言えば、国立病院機構の内部管理の方式を意図的に変えるという作業です。

 

国立病院機構に移行した際に用意された仕組みを第1ステージとすると、この2年ほどで進めてきた建設投資・設備投資改善が第2ステージであり、個人的には、第3ステージとなるべき次の枠組みは、「次の世代で」と考えていましたが、退職時期が延びたことから、私の「残り時間」を投入することになりました。

 

再生プランの目標の第1は、各病院の行動目標を明確にすることでした。
当時は、赤字が大きく改善意欲が著しく低下している病院もあり、現実的な改善目標を設定することが必要だったからです。成績の悪い子供に、いきなり「100点をとれ」と厳しく言っても、かえって努力する意欲が減るのと同じことです。子供であれば、まず、「留年しないように○○点をとろう。」と現実的な目標を設定するはずです。
実際に「人件費・材料費・経費等も払えていない病院は、それを払えるように」「借入金の利息が払えていない病院は、それを払えるように」と、いわば「他人に迷惑をかけない」という現実的な目標としました。目標が、単なる数字では、なかなか力が出ないからです。
 

これとは別に、私は、第2の目標として、「経営できる人材を増やす(写真)」ということに主眼を置き、組織内に公言していました。特に、経営不振の病院に外部から関わるべき、本部・ブロック職員の知識・スキルの向上にです。
まず、吉田部長と相談の上、本部職員を対象に、「医療経営コンサルタント 北川博一」との形で講演を行い、「本部の仕事はお役所と変わらない」「今後の改善には、お役所の仕事の方法ではダメ」とのメッセージを強く伝えました。
聴講者からのアンケートでは、外部講師であれば、内容からして大きな反発もあったのでしょうが、「考えさせられることが多かった。」との意見が多い一方で、「厚生労働省職員のプライドを大事にしたい。」といった意見も当然ありました。私に、2年以上、「叩かれ続けてきた」財務部の職員の中には、ニコニコと笑っている人がいたので、後で聞くと「あんなの当たり前です。他の部の人も鍛えるべきです。」とのこと。彼らの成長を頼もしく思ったものです。

 

次に行ったのは、建設投資を通じて蓄積してきたノウハウを一般化するために、これまで財務部と病院で個別に行っていた案件形成のヒアリングを、各ブロック事務所で行い、ブロックの経営指導の担当者の皆さんにそれを見せたことです。病院報を連載した福山医療センターとの厳しいやりとりは、この時の中国四国ブロックでのことです。
各地域とも、朝から夕方まで、4~5件を行ったのですが、ブロック職員が期待以上に関心を見せたことが印象的でした。彼ら自身も、こうした話は、新鮮だったからでしょう。私は、ヘトヘトでしたが。
本部・ブロックでのトライアルは、彼らの「気づき」としては、思った以上に効果的でした。

次は、それをどう広げるかでした。