親と歩く11 人口3千人の「能楽の里」で30歳代の能面師と話す 

2012年9月26日

今月は、両親と「能楽の里」で町おこしを進める福井県池田町にある「能面美術館」に行きました。

福井の我が家から車で40分ほどですが、平野部では、ほとんど稲刈りも終わっていますが、池田町では、まだ稲穂が実る景色。

寒いためなのか、米の品種が違うのか、理由はわかりませんが、確かに、自宅周辺の暑さは感じません。冬場には2m近い積雪となることも珍しくないとのことです。

 

さて、私は全く知りませんでしたが、福井県は能面のルーツともいえる土地とのことです。能面は、鎌倉から室町時代にかけて様式が完成したようですが、池田町には、その頃から始まった「水海の田楽能舞」が、今でも2月に行われることなど、最近知りました。

 

こうした池田町の文化を背景にした「能面美術館」に訪れると、30歳代と思われる男性に気さくに話しかけていただきました。2代目館長の桑田氏(写真は父親に当たる初代館長の作 絵葉書から)です。

最初は、どういう方かわからずも、種々、能の歴史、能面の意味などを説明いただき、「いくらくらいのものなのですかね?」との下世話な質問にも、「これを欲しいと思う人が少ないから 絵や楽器などから比べると格段に安く ここにある一番高いものでも○○万円程度です。なので、能面を作るだけで食べていける職人は、ほとんどいまんせん。」と丁寧に回答いただきました。

 

しかし、最も驚いたのは、隣にある古民家を移築した「能面研修館」です。

「体験できます」との看板から、数時間の体験かと思いきや・・・なんと 10回程度通って 実際に檜の角材から能面を切り出して、磨きあげると 極めて、本格的なものです。

「福井の人ばかりですか」と聞くと、月6日の実習日があり、他県からの参加も多く、筑波から毎月日帰りで通う人、一泊二日で宿泊する人もいるようです。それらの人は、能楽師に作成した能面を使ってもらうことが目標とのことで、完全に修業の場です。

質の高いものには、遠方からでも人は集まるという ビジネスと同じことなのだな・・・と思いながら、昔、父親が大工だったこと思いだし、「やってみたら?」と水を向けたら、関心は示したものの、「通うのが難しいね・・」とのこと。やはり、高齢者にとっては、移動が大きな負担のようです。

 

池田町自体も、人口は3千人、1/3は高齢者となっており、桑田氏によれば、町長は頑張って町おこしを工夫しているが、「高校になると町を出て、大学に行くと、もう池田には戻って来ない。町は高齢化が進むばかり。」とのこと。

数は多くないものの、全国から人が集まる面を持ちながら、一方では、地元の人間を、そこに定住させるだけの経済力のない地域。誰もがサラリーマンになるような時代には、なかなか解決が難しい問題です。

私のような自営業であれば、移動手段と通信手段があれば、どこに暮らしていても 何とかなるのですが・・・働き方を大きく変えない限り、こうした地方の衰弱は止まらないような気がします。

こうした現実の前には、地域医療・地域福祉といった国や業界関係者の掛け声も 虚しく響きます。

 

そう考えながら、両親の希望により、4月に訪問した「うるしの里会館」に寄り道。

その時に作成していた地元用の山車が完成したとの新聞記事を読み、ぜひ見てみたいとのこと。完成した山車(関心のある人はこちら)を見て、両親は、「立派なものね」と感心していました。

お昼に 福井名物 ソースかつ丼を食べて 4時間程度の小旅行を終えました。